民法(相続法)の改正について


民法の改正について、昨年7月に法案が可決し、1980年(昭和55年)以来、約40年ぶりに民法が大幅に改正されます。
この施行については、段階的になされることになっています。
その民法のうち、相続に関する法律の部分について、施行順に解説をしたいと思います。

自筆証書遺言の方式について

遺言には大きく分けて2つの方式があり、1つは公正証書遺言、もう1つは自筆証書遺言です。
公正証書遺言は、証人2名の立ち合いのもとに、公証人役場で作成する遺言です。
自筆証書遺言は、自筆で書くもので、人に見られる心配はないとはいえ、今までは全て全文手書きでないといけませんでした。
それが、今回の改正では、「財産目録」の部分についてのみ、パソコンによる作成、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等の添付でOKとなりました。
また遺言の偽造を防ぐため、目録にもすべて署名・捺印する必要があります。

また、紛失・偽造を妨げる法務局での「自筆証書遺言の保管制度」が新たに創設されます。
このスタートは2020年7月10日ですので、1年ほど先になりますが、こういう制度もできるということになりました。
法務局での保管制度を利用した場合、家庭裁判所での検認手続は必要なくなります。

特別寄与料の請求権について

相続の権利のない親族が介護に貢献をしているという場合、相続人への特別寄与料の請求を認めるという内容の改正がなされます。
この特別寄与料ですが、今年の7月1日に施行されます。
例えば、夫の親の介護をしているという長男の嫁が、特別寄与料の請求ができる、ということです。
子どもがいる夫婦という家族構成のケースで、夫が死亡した場合に相続の権利がある法定相続人は、妻と子どもということとなります。
つまり子供の配偶者は法定相続人にはならないのです。
介護してきた長男の嫁などは、不公平と感じることもあったかと思います。
それで、新設された民法第1050条では、無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人(この例の場合、夫の親)の財産の維持・増加について特別の寄与をした被相続人の親族(「特別寄与者」という、この例の場合長男の嫁)は、相続の開始後、相続人に対し寄与に応じた額の金銭(「特別寄与料」という)の支払を請求できると定められました。
要するに、長男の嫁は、相続財産を受け取った夫の兄弟に、介護に貢献した対価として一部を支払ってくれと請求できる、というわけです。
しかし、相続人が納得して請求通り認めてくれるかどうかという問題もあり、もめることもあるのでは、と思われます。
特別寄与料の請求金額が折り合わない場合は、家庭裁判所が決定することになります。

遺産分割前の払い戻し制度について

相続が発生すると、被相続人の銀行口座は凍結されるので、遺産分割が済むまで引き出すことができません。
病院の支払や葬儀代に使いたくても、相続人がその資金を準備せざるを得ないという問題がありました。
それが、今年2019年の7月1日からは、遺産分割前の払い戻し制度が創設され、一定額については単独払い戻しが可能になります。
単独で引き出せる金額は、相続開始時の預貯金額×共同相続人の法定相続分の3分の1(ただし、1つの金融機関から引き出せるのは150万円まで。)
たとえば、被相続人の預金が900万円あって法定相続人が3人の子どもの場合、法定相続分どおり分割すると1人当たり300万円ですが、引き出せるのはその3分の1の100万円、ということになります。

配偶者居住権、配偶者短期居住権について

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、終身または一定期間、その建物を無償で使用することができる権利です。
建物の権利を、負担付の所有権と配偶者居住権とに分け、遺産分割の場合に、配偶者が配偶者居住権を取得し、配偶者以外の相続人が負担付きの所有権を取得する、ということです。
そのようにして、配偶者が自宅に住み続けることができるようにします。
配偶者は、住み慣れた自宅に住み続けながら、預貯金などの他の財産もより多く取得できるようになり、配偶者のその後の生活の安定を図ることができるようになります。
また、配偶者短期居住権とは、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に居住していた場合に、遺産の分割がされるまでの一定期間、その建物に無償で住み続ける
被相続人の意思等に関係なく、相続開始時からその権利が発生します。
そして、原則として、遺産分割により自宅を誰かが相続するかが確定した日、または相続開始時から6ヶ月を経過する日まで、その配偶者はその建物に住むことができるという権利です。

自宅の生前贈与を、特別受益の対象外にできるようになる

結婚期間が20年以上の夫婦間で、配偶者に対して自宅の遺贈または贈与がされた場合に、特別受益がされたものとして扱う必要がないこととなりました。
改正前には、被相続人が生前、配偶者に対して自宅の贈与をした場合、その自宅は遺産の先渡しとみなされ、配偶者が遺産分割で受け取れる財産総額がその分減らされていました。
今回の改正により、自宅についての生前贈与を受けた場合には、配偶者は結果的により多くの相続財産を得て、生活の安定を図ることができます。
この下の図の例では、被相続人が自宅とその他財産6000万円を残した場合、自宅を含めず、その他の財産を遺産分割する、ということになります。

相続法改正による影響についても、不明の場合は、当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。
小舘行政書士事務所 tokaihorei@nifty.com